禁断の果実
時計の針がちょうど一周する頃、
絢芽が口を開いた。
「明日・・だから・・・・
部屋・・開けといてくれないかなぁ」
部屋に・・ソイツがあがるのか。
俺の心は複雑だった。
妹のそれを、喜ぶのか。
それとも、どこかの父親のように
怒り、嘆くのか。
「まあ、いいけど・・」
いつも陽気な馬鹿な絢芽の声
が真剣になったのにつられて、
俺も真剣になった。
「有難う・・翔」
そういわれて、俺は何を言えばいいのか
分からず、黙りこくる。
そして、絢芽も何も言わないようになり、
起きたまま一晩過ごした。
妙に、時を刻む音が
大きく聞こえる夜の事。