航空路
〈○○八便、○○行きをご利用のお客様に申しあげます〉
アナウンスが響くと同時に、機内が騒がしくなりはじめた。離陸時間がちかづいているのだろう。数時間後には海や国境を越えて、異国の地に足をつけているはずだ。
〈当機はただ今より、離陸いたします〉
女性のアナウンスとともに、機体が動くと浮き上がり地面が離れていく。通路側にいる僕は、外を見て興奮する秀喜の脇から景色を眺めた。
「楽しみだね……」
声に気づいて横を見ると、通路越しにいる笹田と目が合った。
皆に気づかれないように付き合う――
それが僕等の暗黙の了解だったが、通路越しで隣り合わせなら気づかれないだろう。
機内での席順を決める時、計画的に彼女と通路越しになれるようにしたのだ。
笹田は「楽しみ」と僕に言ったが、何となく不安そうな表情が見て取れる。
『飛行機に乗るのははじめて』という笹田が言っていたのを、不意に思い出した。
「耳がおかしくなった時は、あくびをすればいいよ。気圧の変化でそうなるらしいからさ。耳の中の気圧と外の気圧を同じにすればいいんだって」
少しでも笹田の気持ちを和らげようと、僕は彼女に親から教わったことをそのまま伝えた。
アナウンスが響くと同時に、機内が騒がしくなりはじめた。離陸時間がちかづいているのだろう。数時間後には海や国境を越えて、異国の地に足をつけているはずだ。
〈当機はただ今より、離陸いたします〉
女性のアナウンスとともに、機体が動くと浮き上がり地面が離れていく。通路側にいる僕は、外を見て興奮する秀喜の脇から景色を眺めた。
「楽しみだね……」
声に気づいて横を見ると、通路越しにいる笹田と目が合った。
皆に気づかれないように付き合う――
それが僕等の暗黙の了解だったが、通路越しで隣り合わせなら気づかれないだろう。
機内での席順を決める時、計画的に彼女と通路越しになれるようにしたのだ。
笹田は「楽しみ」と僕に言ったが、何となく不安そうな表情が見て取れる。
『飛行機に乗るのははじめて』という笹田が言っていたのを、不意に思い出した。
「耳がおかしくなった時は、あくびをすればいいよ。気圧の変化でそうなるらしいからさ。耳の中の気圧と外の気圧を同じにすればいいんだって」
少しでも笹田の気持ちを和らげようと、僕は彼女に親から教わったことをそのまま伝えた。