二百文字小説【小さな玉手箱】
《53.送信したのは》

 突然、親父からメールがきた。

『母さんが病院に運び込まれた』

 切迫した文面を見て、慌てて兄弟に転送する。

 ところが駆けつけてみると、病室のベッドの上には元気な母の姿が。

「転んでしまってね。膝が割れたって」

 大したことがないのに呼び出してと、兄弟に怒られた。

 俺が転送してしまったから言い訳できない。

「それは母さんが顔を見たいって仕向けたんだよ」

 思わぬ親父の言葉に全員が黙った。

 リンゴを食べている母は幸せそうだ。
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