契約結婚の終わらせかた
(今日は……帰りたくないな)
あくあくりすたるが閉店すれば、スーパーに寄ってから帰るのが習慣になってたけど。何となく、マンションには帰りづらかった。
ため息をつきながらふらふらと歩いた先に着いたのは、他でもないおはる屋で。ちょうどおばあちゃんが店じまいをしてるところだった。
「なんだい? 忘れ物かい」
おばあちゃんはそう訊いてきたけど、私はうまく答えることができない。胸が詰まったようで喉から言葉が出ない。
やがて、頬を流れた涙がぽたぽたと地面に吸い込まれていった。
「やれやれ、いい年して子どもみたいに泣いてみっともない。さっさと入んな」
おばあちゃんは憎まれ口をたたくけど、これがおばあちゃんなりの優しさで。私はコクリと頷くと、おばあちゃんの後に続いて懐かしい家へ入っていった。