契約結婚の終わらせかた
久しぶりにおばあちゃん手作りのカレーとらっきょうを食べて、一階の和室で布団を並べて一緒に眠る。
たぶん、おばあちゃんはなにかあったかと勘づいてる。それでも無理に聞き出そうとしないのは、私から話すのを待っているからだ。
灯りを消して豆電球のみの薄暗い中で、私はぽつりとおばあちゃんを呼ぶ。
「私……伊織さんに怒られちゃったんだ」
「……」
「伊織さんが親と断絶するほど仲が悪いのは知ってたのに。お母さんが悲しがってたから……伊織さんがいない間にお母さんを家にあげたけど。それを知られて……」
グスッ、と鼻をすする。
「謝ろうとしたけど、伊織さんは全然取り合ってくれないの。どうしたらいいんだろ?」
「そんなの、簡単さね」
フン! とおばあちゃんは鼻を鳴らす。
「自分が悪いなら、ごめんなさいと謝り続けるしかないだろ。その後は相手次第さ。会えないからと謝るのを諦める根性なしに育てたおぼえはないよ!」
結局、おばあちゃんからはアンタが悪いと叱りつけられたけど。
何となく、勇気をもらえたような気がした。
勇気ついでにおばあちゃんに葵和子さんのことを訊ねたら、やはり憶えてたらしい。
「わしが面倒を見た憶えはないがね。何度か遊びには来てたよ。あんたの結婚相手があの子の息子だったとはね……通りで似てると思ったよ」
私がバイト先で伊織さんを拾っておはる屋に連れてきた時、おばあちゃんが呟いたのはそれだった。謎が一つ解決していった。