契約結婚の終わらせかた
会場に入って驚いた。
すごく広くて赤い絨毯が敷かれてシャンデリアが輝いて――なんて私の貧相なイメージとは正反対。たくさんの極彩色の花が飾られて、明るく開放的な空気が流れてた。
仮面パーティーという通りにそれぞれ思い思いの仮面を着けてるから、パッと見ただけでは誰が伊織さんなのか区別がつかなさそうだけど。
まだこの中には伊織さんがいない気がした。
「さすがにすごい人数ねえ」
「そうですね」
あずささんの言葉に相づちを打った後、ギュッと胸元で左手を握りしめる。
(これからは私一人の戦いなんだ。大丈夫……私はやれる。伊織さんにちゃんと謝れる)
気合いを入れ直した私は、あずささんにお礼を言おうと振り返った。
「あずささん、ここまでありがとうございました。これからは私は一人……で……!?」
「ふふふ……あの男の子、隣の男性といい感じねえ。やっぱし最初は無理やりだけどゆっくりと心を開いて……ふふふ」
「……あの、あずささん?」
「あ、ライバルが来た! 手強そうね。2人はやっぱり幼なじみで……相思相愛だけど略奪……寝取られね」
あずささん……
あずささんが。
……ちょこっとだけ……腐った女子してました。
「……高校時代からの密やかな趣味なの。これが原因で伊織だけに限らず、男にフラれ続けたのよね」
会場の隅っこで膝を抱えて座り込んだあずささんは、涙を流しながらフッと悟りきったお顔をされてましたよ。