契約結婚の終わらせかた
「私は二次元(ゆめのせかい)と三次元(げんじつ)の区別はしっかり着けてるわ。だから、伊織さんを好きな気持ちに変わりはない。
そりゃたまに仕事中、鬼畜な秘書に迫られるちょこっと気弱な社長とか萌えてるけど」
「………」
鬼畜な秘書に迫られる社長って……確実に葛西さんと伊織さんのことですよね。 仕事中になんて想像してるんですか。
でもまあ、人に迷惑をかけないなら趣味は自由だと思う。
「私は、そういったのは個人の自由だと思います。実害がないなら……これからも楽しまれては?」
「ありがとう~」
ガバッ! とあずささんに抱きしめられました。
「同性の友達にもドン引きされたし、やっぱり受け入れられないのかなって。認めてくれてありがとう」
ぎゅむ~と立派なバストに挟まれて息苦しいですが。あずささんが本当に嬉しそうに笑うから、これはこれで良いかなと思う。きっと彼女なりにたくさん悩んできたからこそ。
「私だって、立派な人間じゃありませんから。少し違うだけで避けたりしたくはありません。だって……自分が排除された悲しみを知ってますから」
捨て子なだけでいじめられたり、愚鈍だからと孤立して友達がいなかった子ども時代。
された側の気持ちが痛いほどよくわかるんです。
だから……
きっと、伊織さんもその傷を抱えてる。
彼は、家族から排除されたと感じて深く傷ついてる。私はそんな気がしてならなかった。