契約結婚の終わらせかた




空くんは何か文句を言ってたけど、男の裸なんざ見たくね~! と叫んでた。プリンと蒸しパンを交換条件に店番をしてくれてる。


(さてと……作らなきゃな)


牛乳、生クリーム、卵と砂糖にゼラチン……あとは秘伝のこれ。

「よし、始めるか」


腕捲りをして、さっそく取りかかった。





私が作るのは焼いたり蒸したりしないプリン。冷蔵庫で冷やし固めるから、時間が必要なんだよね。


途中空くんと店番を変わったりして様子を見ること、二時間以上。


おばあちゃんが帰ってきてバイトに行く時間が迫ってから、やっと固まって冷蔵庫から出すことができた。


夕食は魚の煮付けと胡瓜とワカメの酢の物と茄子のお味噌汁。もちろん男性にも出したけど、全く見向きもせずひたすらプリンを待ってた。


で、やっとできたプリンをテーブルに置けば、男性はすぐに食べ始める。彼の熱は七度ちょいまで下がったから、もう心配いらないと思うけど。


「あの……もう歩けそうなら、駅まででも送りましょうか? それとも誰かに連絡して迎えに……」


私が話しかけたところで、男性は10個作ったプリンの6つ目を食べてらっしゃって。全然聞こえないみたい。


(帰らなくていいのかな? って言うか……プリンしか食べてなくて栄養バランスめちゃくちゃ)


指輪はないけど、私と違ってたぶん家族はいるはず。こんな偏食が家族だと大変だな、って他人事に思いながら、ファミレスのバイトに行くため店先で靴を履いた。

< 17 / 280 >

この作品をシェア

pagetop