契約結婚の終わらせかた

2月~涙の意味





“桂グループ御曹司と中村家令嬢近々婚約か”


テレビのテロップにはそんな文字が踊る。


おはる屋の和室には未だにブラウン管テレビが現役で、安い地デジチューナーを繋いでしのいでる。

アパートにテレビはないから、テレビを観たい時はおはる屋を使う。今も、店番が終わってからぼんやりとテレビを眺めてた。


『桂グループ次期後継者と目される和泉 伊織さんと中村家令嬢である中村 あずささんの婚約が近々整う見通しで、年内には挙式ではないかとのことです』


レポーターがあずささんに直接インタビューを仕掛けると、本社ビルから出てきた彼女は『わたくしから無責任なことは申し上げられませんわ。すべては親に任せてありますの』と。


けど、あずささんは微笑み
『近々皆さまによいお知らせが出来るかもしれませんわ』と幸せそうに話してた。


夕方からのワイドショーで現実を突き付けられて、すぐに電源を消すと立てていた膝に顔を埋める。


(これでいいんだ……伊織さんは近いうちに私との離婚に同意する。離婚届はテーブルに置いてあるから……近いうちに取りにいかなきゃ。伊織さんに挨拶をしてからきちんとお別れしなきゃね)


熱いものが胸から込み上げてくるけど、それを堪えてまぶたをきつく閉じた。

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