契約結婚の終わらせかた
「なあ、やっぱりこれしかないぜ!」
私が落ち込んでいる後ろでは、子ども達が集まって話し合いをしてる。私も当事者だから参加しなきゃと思うのに、何だか体が重くて動かない。
でも、駄目だ。
おはる屋の存続を願う子ども達の自主的な話し合い。ここで育った私こそ積極的に関わらないと。と、自分を叱責して顔を上げると畳の上をいざって移動。その輪の中に加わった。
「碧お姉ちゃん、大丈夫? 無理はしなくていいんだよ」
心愛ちゃんが気を遣って話しかけてくれるけど、ふるふると顔を振って大丈夫、と言っておく。
「私の大切な場所の危機なんだから、無関心ではいられないよ」
「そう?」と心配そうな顔をした後、心愛ちゃんはコホンと咳払いをする。
「えっと、今日はおはる屋の存続がピンチということで、どうすれば良いのか話し合いたいと思います。意見があれば何でも言ってください」
「はい、オレはバイトして助けるわ」
とは空くん。
「空兄ぃ、もうすぐ受験生になるっしょ? いいの?」
「いいんだよ! オレにとっては受験より大切な問題だからな……碧姉ちゃんの居場所だし」
最後はポツリと小さな声で、切なそうな顔をしたけど。私は無言で“ごめんね”と謝る。
好きな人ができた今は空くんの気持ちは痛いほどわかるけど。他の人がダメだから空くんを、なんて安易な弄びは絶対にしたくないから。
(空くんにはきっと同い年の可愛い子が似合うよ……)
きっと、いつか。彼には可愛い恋人が出来て。彼女とともにおはる屋に来られるだろう。
それは私の希望でもあり、ある種の予感めいたものでもあった。