契約結婚の終わらせかた
1週間前、私は深夜のアルバイト先で雨に打たれ熱を出した伊織さんを拾って家に連れ帰った。
彼は翌日の昼過ぎに良くなり起き出してきたんだけど……。
私が作ったプリンを食べた途端、いきなり結婚しろと言い出した。
しかも、愛がない前提の1年間限定の契約結婚。
伊織さんはその代わりに、おばあちゃんの駄菓子屋を助けるという交換条件を提示してきた。
最初、私は何を言われたのかが解らなくて、彼をぼうっと見てた。
すると、伊織さんはますます眉間のシワを深くして言葉を重ねてきた。
「1年だ。1年我慢してオレの妻を勤めれば、二度と困ることはない。借金は全てを清算するし、婚姻期間の間は月に幾らか援助する。離婚の際は慰謝料で1000万。その上今住んでるマンションの権利書。これでも不足か?」
「い、いっせんまん!?」
突然提示された桁違いの額に、私は本気で目が飛び出すかと思った。
「だ、ダメです! 仮にお受けするとしても、そんなにいただけません! それに、借金だって何とかして返します。だから、この話は……」