契約結婚の終わらせかた
すぐには無理と言うことでその場は一旦解散し、翌日空くんがパソコンで署名用の用紙を作って印刷してきてくれた。
ちゃんとした目的と請願書が添付されていて、よく作れたなと思う。
朝、早くおはる屋に来ておばあちゃんに土地が売られる件を話あおうとしたけど、「何を言おうがわしの気は変わらないからね」の一点張り。取りつくしまもない。
だから、子ども達の署名運動に加わることにした。たくさんの賛同者がいれば、おばあちゃんの気も変わると期待して。
今日は土曜日だからか、駅前通りの人出は多い。私は息を吸い込み、お腹から声を張り上げた。
「和田町の駄菓子屋“おはる屋”が消えてしまうピンチを迎えてます! 一度でもご来店いただきましたら、ご賛同のご署名をお願いします!」
「お願いします!」
「ボクたちの大切な場所を守りたいんです! お願いします!!」
子ども達も声を張り上げ、道行く人たちへ訴える。
かなりの人たちが無関心そうに通り過ぎるけど。
流れが変わったのは一人のご年配の男性が足を止めてから。
「なんだと? あのおはる屋がなくなっちまうのかい?」
「はい! 土地が無くなるのでお店も消えてしまうんです」
心愛ちゃんが一生懸命に説明をすると、男性はふむと頷いてペンを持つと、サラサラと署名し住所も記入した。
「ワシも子どものころは世話になった。なくすのは惜しいからな」
「ありがとうございます」
心愛ちゃんが深々と頭を下げる。
すると、ぽつぽつと興味を示した人たちが足を止めだした。
「へ? あっちなくなるの」
「マジで?」
地元民ならば少なからず思い出はあったらしく、おはる屋の思出話をした後に署名をくれた。