契約結婚の終わらせかた
「ごめんなさいね、碧ちゃん……しばらく着付け教室はお休みしていいかしら?」
着付け教室のため葛西さん宅に伺うと、くるみさんが真っ青な顔でソファに腰かけた。
「いいえ、それくらい構いませんけど……体は大丈夫なんですか?」
「ええ、体は病気じゃないけど……きゃっ!?」
くるみさんが可愛らしい悲鳴を上げたのも道理。いきなり葛西さんが妻の体を抱き上げたからだ。
「我が愛しのハニー! ああ、我々の天使が君の中に宿ったのは喜ばしいが、ハニーが辛いのは僕も辛いよ! さ、ハニー。ちゃんとお布団で横になろうね」
「良介さんたらぁ、過保護ですわよ。けど、心配してくれてありがとう。ちゅっ」
「おお、ハニー……僕を誘惑するとは悪いこだ。それならばその期待に応えるのも夫の務め……!」
ばびゅん、と疾風のように葛西さんは愛妻を連れて寝室へ一直線でした……。
唖然としてる私の前に、カチャリとティーカップが置かれる。一人娘の千尋ちゃんが紅茶を淹れてくれたらしい。
「あ、ありがとう」
「ごめんね、碧お姉ちゃん。あのバカップル、たぶん二時間は出てこないから待つだけ時間の無駄だよ」
そう言いながら手作りというクッキーをごちそうしてくれたけど。
千尋ちゃんってたしかまだ小学一年生の7歳でしたよね。
それなのにこれだけクールで対応が完璧な子どもさんに育つって……。
「まったく、弟か妹が生まれたらわたしがバカップルの代わりに育てなきゃ。あの毒から守るには私がしっかりしなきゃいけないもんね」
……葛西さんとくるみさん……2人の世界より大切なものをちゃんと見てあげてくださいよ……。