契約結婚の終わらせかた
確かに、プリンを作るための道具は100均で買いそろえる必要があったんだ。
鍋すらなかったから、口径の小さなアルミ平鍋しか買えなかったけど。今は鈴木さんが少しずつ道具を揃えてるから、マシになってきたけど。
(ご飯を作って一緒に食べるなんて……夢のまた夢かなあ)
おばあちゃんの持論で、人間が仲良くなるのは同じ釜の飯をたべる。つまり、一緒にご飯を食べるのがいいってのがある。
まだマトモな人間関係を築いたことがない私にはいまいちわからないけど、確かに美帆さんとはお茶を通じて仲良くなった。
(また、アクアクリスタルを訊ねてみようかな)
美帆さんの営むガラス工芸店への道はもう覚えた。あのガラスのウサギは、美帆さんが知り合った記念にって格安で譲ってくれたもの。
あれから美帆さんとは2、3度お店でお茶をした。私が焼いたお菓子を持っていったら喜んでくれたし。
今日も寄ろうかとスコーンを焼いてきたけど……。
おはる屋の店番をしながら、ため息をつく。美帆さんにこんな相談していいものかわからない。あまりに通うと図々しいかもしれないし、プライベートを明かすにはまだ日が浅い気がした。