契約結婚の終わらせかた
コツン、と頭に何かが触れて顔を上げれば、空くんが呆れたような顔をしてた。
「なあにため息ついてんだよ。ほら、レジして」
どうやら空くんは定期講読してる雑誌を買いに来てくれたらしい。「ごめんね」と慌てて金額をレジに入力し、金額を告げた。
「なぁ、碧姉ちゃんさ。最近ため息多くね?」
小銭でお釣りを返した時、空くんにそんな指摘をされてドキッと心臓が跳ねた。
結婚については子どもたちに教えてない。ただ、私に事情ができておはる屋から出て生活をしてるとだけは話してた。
空くんはもうすぐ17になる高校生だから、当然ちっちゃい子ども達よりいろいろ目敏い。僅かな変化も見逃さずに指摘してくる。
それでも。大人の汚い事情を知られたくなんてなかった。
「そ、そうかな? それは……仕方ないよ! ダイエットが上手くいかないだけだから」
あはは、と笑って誤魔化す。すると、空くんは呆れをますます深めた。
「碧姉ちゃん、そんなに太ってないだろ~せいぜいぽちゃぽちゃなだけだ」
「ぽちゃが二回って、どんだけ太ってるって言いたいのさ」
空くんの表現が可笑しくて、ぶはっと噴き出した。
私が体型の悩みを抱えてるのは空くんだから知ってる。彼は年下だけど、半ば幼なじみみたいなものだ。いじめてきた年上に噛みついて助けてくれたこともあったんだよね。
だからか、彼のそばだと不思議と自然にいられるんだ。