契約結婚の終わらせかた
「うわぁ、キレイ!」
五月晴れの空に、子ども達のはしゃぐ声が聞こえる。
日曜日。午前中だけという約束だけど、空くんが連れてきた子どもたちと一緒に藤祭りにやって来た。
晴れ渡った青空に薄紫の藤の花が映えて、とても綺麗。隙間なく滝のように垂れ下がる様は圧巻だった。
久しぶりに絵心がくすぐられて、抱えてたスケッチブックを開く。
「碧姉ちゃん、あたし、りんごあめ食べたい!」
心愛ちゃんが私におねだりしてきたから、財布を出そうとしたけど。先に空くんが小銭入れから500円ずつ子ども達にお小遣いをあげてた。
「無駄遣いすんなよ! 冷たいもんは腹を壊さないように気をつけろ」
「はぁい! 空兄ちゃん、ありがとう!」
子どもたちは早速目的のお店に向かって走る。花より団子だわ~と、素直に欲望を表す子ども達が微笑ましく感じてクスクス笑った。
「空くん、兄貴面のために無理しなくていいんだよ? はい、お金」
「いいって。バイト代が入ったばっかだし、碧姉ちゃんにばっかし負担をかける訳にはいかないだろ。碧姉ちゃん、バイト辞めたじゃん」
「……それは」
空くんにまで、経済的な心配をされているなんて思わなかった。
確かに、ファミレスのバイトは伊織さんの命令で辞めるしかなかった。だから、空くんは私が悩んでると思って気遣ったのかな?