契約結婚の終わらせかた
「おまえもひとりぼっちか。私と一緒だね」
子猫をハンカチでくるんで胸に抱える。みゃあ、とか弱い鳴き声は、自分が守らないとって気持ちになった。
「そうだよね……どうせ最初からひとりぼっちなら……期待しちゃ駄目だよね」
本当の家族に、なんて贅沢は言わない。契約だから、愛がないのもわかってる。
でも、せめて。あたたかな何かが……思い出が欲しいなんて。きっと私のわがままだ。
「おばあちゃん……」
心細くなった私は、子猫を抱きしめながら独りで涙を流す。まだ夏には早い雨は体を冷やし、肌寒くなってきた。
瞬間――空が鮮烈に光り、近くで轟音が轟いた。
「きゃあああ!」
ドン、と地面が揺れるような低音がお腹に響く。
(うそ……雷!? 嫌だ……嫌だ!怖い……!!)
バシバシと雷光が輝き、幾筋もの光が地上に落ちていく。たまらなくて耳をふさぎ、その場でしゃがみ込んでガタガタ震えた。
「助けて……助けて……おばあちゃん! おばあちゃん!!」
年甲斐もなく泣きながらおばあちゃんを呼んだ。怖くて怖くてたまらない。
いつも守ってくれるのはおばあちゃんだけだった。何があっても私を受け入れて……私を助けてくれた。
だから……
呼べるのは、おばあちゃんだけだった。
くじけた私が崩れ落ちそうになった時、フッと目の前に陰がよぎった。