契約結婚の終わらせかた
一年目·夏~近づく距離
6月~キレイになりたい
「あっ……」
それを見つけたのは、本当に偶然だった。
いつも家のことはハウスキーパーの鈴木さんがしてくれる。掃除に洗濯にご飯の支度Etc.細かなことまで。彼は週に5日朝8時から夕方5時までいて、夕食の支度までしてから帰る。
さすがに下着は恥ずかしいから、これだけは自分で手洗いして部屋で干してるけれど。
だけど、仮にも妻なのに家にいても何もしないなんて身がもたない。考えてみれば物心ついた頃からおばあちゃんの手伝いをしたり、駄菓子屋で働くのは当然で。こんなにジッとしていなきゃならないのは苦痛でしかなかった。
最初は伊織さんの命令ということで、ガチガチに守ってたけど。一緒に暮らしはじめて1ヶ月以上経った今、さすがに限界が来てた。
だから、今は鈴木さんに頼み込んでちょっとずつ家事を手伝ってる。
何てことのない用事ばかりだけど、“働かざる者食うべからず”をモットーにしてるおばあちゃんに育てられた身からすれば、ちょっとでも役立てれば嬉しい。
最近はゴミの回収が不燃物が隔週の火曜日、燃えるごみが毎週月曜日と木曜日だと初めて知った。
そして、今日も張り切って家のゴミを集めている時――キッチンの三角コーナーで捨てられたものを見た。
半分だけ食べられた跡がある、りんごあめを。