アイドルサマサマ
第1章
宮路真は王子様
白百合女学院、通称「ユリジョ」
名の通り白百合のような少女が集まると言われたシラジョには一人の王子様がいました
「明先輩、頑張ってー!」
フェンス越しに私を応援する一年生に手を振れば、耳が壊れそうな黄色い悲鳴。
思わず、苦い笑いが出る
「今日も人気者だな、明は」
「里中先生」
「くそ、なんで男の俺よりお前の方がモテるんだよー」
その言葉は褒め言葉として受け取るべきなのだろうか?
私を真似るように先生が女子に手を振れば、「きもい」「引っ込め」だの罵倒の嵐
先生は肩を落として去っていった。
宮路明(ミヤジ アキラ)、高校二年生
所属は陸上部で、得意なのは短距離、あと一応部長。
名前も男らしいが、顔も体つきも冗談抜きで男らしい。背丈は174cm、髪は長かったけど邪魔だから切った。それが、余計に男に見える
「明、タイム測るぞ」
「はい」
里中先生に呼ばれ、スタート地点に立ち、音を遮断するように目を閉じて深呼吸。地面を少し踏み鳴らして、姿勢に入る。
「いちについて」
「よーい」
クラッカーの弾ける音と共に、体重を前にかけて弾丸のように飛び出す。腕を振って、地面を蹴る。ゴールした時、笑顔の里中先生のストップウォッチの画面には縮んだタイムの表示
「次の大会、期待してるぞ」
「はい!」
(もっと女の子らしかったら、違う未来を歩いていたのだろうか?)
最近、そんなことを考える。
陸上に明けくれず、放課後に友達と遊んだり、恋人がいたらデートとかだって…
「明先輩、タイムまた縮みましたね!」
顔を洗っていると、にこやかにタオルを渡してきたマネージャーにきっとこの子にはそういう機会が多々あるのだろうとぼんやり思った。
「……」
私には陸上しかない、こんな顔と身体じゃきっと
「明先輩?」
寂しいけど、それが宮路明だ