アイドルサマサマ


「ちょっと、そこの君!」
「?」

部活終わり、駅前の広場でやけに慌てた様子のスーツの男に呼び止められた。なんなんだ

「君カッコいいね。あの、モデルとか興味ない?」
「興味ないです」

なんだ、スカウトか
怪しいと思い、背を向けて歩き出せば予想外なことに腕を捕まれる。

「!ちょっと」
「頼む、助けてくれ!」
「は?」
「今近くのスタジオで撮影しているんだけど、メンバーの一人が来れなくなってしまって …その」
「…他の人に頼んでください」
「君みたいにスラッとした子がいいんだよ!すぐだから、二十分程度だから!」

(面倒くさいのに捕まったな)

あまりにも必死な態度に私は大きくため息をつくと「わかった」と頷いた。

「?!ほ、ほんとに」
「少しだけ、ですよ」
「あ、ありがとう!君は命の恩人だ!!」
「そんな大袈裟な」

目の前の男の人も、悪い人にも見えない

(もし危なかったら走って逃げよう)

「こっちだよ」と誘導する男の背中を見ながら、ぼんやり思った
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