アイドルサマサマ


「ちょっと待って!」
「なに?」
「これ、もしかしてメンズ?」
「?そ、そうだけど」

渡された衣装と雑誌に問いかければ、平然と言ってのける男にぎょっとする。

「わ、私こう見えても女なんですけど」

言葉に男はキョトンとした顔を見せると、大きな声で笑いだした。失礼な!

「いやいや、そんな冗談___」
「冗談じゃない!」

急いで鞄の中から学生証を取り出して見せれば、今度は男がぎょっとした顔を見せる。

「ほ、ほんとだ」
「……帰ります」
「ま、待って待って!もう撮影始まるから!」
「!無理ですって」

「うるせえな、何事だよ」

わーわーと揉める私と男の前に現れた、やけに背の高い男。少し長い黒髪を後ろに流して、耳と首にはジャラジャラとシルバーアクセサリー。

「見つけたきたのって、それ」

それ?
指を指されて、思わずムッとする

「随分垢抜けない奴だな、お前年は?」
「…十七、ですけど」
「は、てっきり中学生かと思った」
「な、ッ」
「こらこら、観月君 」
「金田さん、もっといい男いなかったわけ?」

散々な言われように思わず観月と呼ばれた男をじっと見れば、ニヤリと嫌な顔で笑った。

「なんだ、文句でもあるか?」
「……くせに」
「はあ?」
「たいして、かっこよくないくせに」
「…なんだと」

「はいはーい、ストップだよストップ!」

今度はなに!
私と観月の間に入ってきたサングラスの男

「…洸(コウ)、なんだよ」
「駄目じゃん、観月君ってば新人さん虐めたら」
「こいつ、生意気なんだ」
「!どっちが」
「はーいはい」

パンパン、と手を叩かれて私と観月は睨み合った状態で黙りこむ。

「君、名前は?」
「…明です」
「明君ね、俺は洸。今日は弘人(ヒロト)の代わりにわざわざありがとう、あいつ体調崩したらしくてさ!」
「は、はあ 」

洸と名乗った男はダークブラウンの耳にかかる程度の髪を無造作にしていて、耳には小さなピアスが光っていた。

「チッ…」

観月はといえば 、露骨に私に対して舌打ちをするとその場を去っていった。

(なんなんだ、あの男!)

「ごめんね、明君」
「え?」
「でもね、観月がああいう態度をとるってことは君には才能があるってことなんだよ」
「…才能?」
「あ、そうだ!あとメンバー二人いるから紹介するよ」

「こっちこっち」笑顔で手を引かれて、意外と大きくて暖かい手に少しドキリとする。

(完全に、帰るタイミングを逃してしまった)

観月という男はムカつくが、この人はなんだか…

「明君?」
「!あ、いえ何でも…ない、です」

なんだか、素敵な気がする。
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