フェアリーの秘密
それまで騒がしかったこの場は、私の一言により、一瞬で静まりました。
それでもわたしは、男性の目から視線を外しません。一度外してしまうと、急に涙が溢れ出してきそうな気がしたのです。


……そう、私はその時、怖かったのです。
急に友達がいなくなって、次に姿を目にした時は、彼女は意識を失っていて。
小学2年生だった私には、その光景は心が縮こまり、恐ろしくなるのには、十分すぎる要素でした。

あの後、男性の親切により、無事に友人は目を覚ましました。
男性が、念のため病院に診てもらった方が良い、と言って聞かず、検査をした結果、どこにも異常はありませんでした。

それからも、男性は友人を家に送って下さいました。
彼女のご両親が、何度もお礼を言ったり、謝ったりするのを、私はじっと見ていて、何年も経った今でも、鮮明に覚えています。
男性はその度に頭を横に振り、とんでもないことです、お嬢さんがご無事でなにより、などとおっしゃいました。

あの男性のお名前は、当時は存じていたのかもしれませんが、今では残念なことに、全く覚えていないのです。
もしもまた、彼にお会いすることがきたなら、ぜひともあの時のお礼を申し上げたい気持ちです。
大切な友人を助けていただいて、どうもありがとうございました、と。

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