初恋ウエディング~交際0ヵ月の求愛~
眞彩の出産日が来た。
院長にも付き合って貰い、何度も手術のリハーサルをした。
「いよいよ、本番だね・・・相馬君」

「はい、院長」

「今日は君がパパになる日でもある」

俺は我が子と手術台で対面する。

「何があっても、医者として冷静さを失ってはいけないよ。相馬君」

院長はもしもの場合の覚悟もしておけと遠回しに言っていた。

「既に覚悟はしています。院長」
俺は医療チームのメンバーにの自ら名乗りを挙げた。
だから、その時に覚悟を決めていた・・・

「それなら安心だ。まだ、時間がある。奥さんの顔を見ておいで。相馬君」

「はい」

俺は手術の準備の前に眞彩に会いに行った。

「眞彩」

眞彩には俺の父さんと母さんが付き添っていた。

「柚希・・・」

眞彩はストレッチャーに仰向けに寝かされ、手術室に向かっていた。

彼女の顔は穏やかで不安の色は見えなかった。

「眞彩・・・」

「私がこの子を産んだら、柚希・・・この子をお願いね」

「分かってるよ。眞彩」

人の命を救うのが医者の務め。

この子の命だけは絶対に救いたい。

―――――俺と眞彩の愛の証であり、家族だから・・・

俺と眞彩は指切りして約束した。


――――あの夏の日。

眞彩は俺の願いを叶える為に火傷をした。
その願いゴトを叶えてくれたのは眞彩だった。

彩名には申し訳ないけど・・・

今の俺のココロは眞彩の想いでいっぱいだ。

「柚希、お願いね・・・」

「分かってるよ。母さん・・・父さん」

「柚希、頼むぞ。俺達も手術の成功を祈っている」

「それよりも爺ちゃんの容体は??」

爺ちゃんも新薬の効果が薄れ、今は具合を悪くして、意識がない状態が続いていた。
「お父さんのコトよりも・・・貴方は眞彩さんと赤ちゃんのコトを考えて。柚希」

「分かってるよ。母さん」


< 243 / 249 >

この作品をシェア

pagetop