初恋ウエディング~交際0ヵ月の求愛~
私も部屋の鍵を閉めて、1階のロビーに降りた。

ロビーには人だかりが出来ている。

その人だかりの中に割り込んでいくと、恰幅の良い男性が仰向けに横たわっていた。
柚希が、男性の浴衣の袂を開いて胸元を露わにして直に胸骨圧迫を行い、蘇生を行っていた。

男性従業員がAEDを柚希に渡す。

柚希は慣れた手つきでケースを開き、電源スイッチをオン、男性の胸に電極パッドをセットして心電図の解析ボタンを押した。

「さすがは心臓外科医…手際がいいわ」

周囲の人達は柚希の迅速な対応を褒めていた。


額に汗を滲ませ、目の前の命を必死に救おうとする柚希の姿はステキだった。


駆け付けた救急隊員たちに引継ぎを済ませ、仕事を終えた。

私は終わるまでずっとロビーで柚希を待っていた。

「待たせたな」

「よかったね・・・柚希のおかげで一人の命が助かったんだから・・・」

「それが俺の仕事だから・・・」

「柚希の仕事は本当に素敵な仕事だね」

「部屋に戻って宴会の続きだ」

「うん」

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