初恋ウエディング~交際0ヵ月の求愛~
「眞彩ちゃん…ビーフシチューのおかわりあるから遠慮なく言ってね」
母さんは優しい声色で笑顔を浮かべて将来の嫁となる眞彩を気遣う。
「眞彩ちゃん…俺の部屋に来れば饅頭もあるぞ」
爺ちゃんまで眞彩を気遣った。
「二人して何なの?眞彩だった明日…仕事だし、そう長居出来ないと思うよ」
「なら、今夜はウチに泊まればいい」
「父さん!?」
父さんが、ネクタイの結ぶ目を緩めながらダイニングルームに入って来た。
「お帰りなさい。尚貴さん」
「お邪魔しています。相馬社長」
眞彩はスプーンを置き、立ち上がって父さんに挨拶した。
「ウチの柚希と眞彩さんは本当に結婚するようだな」
「尚貴…今は秘書としてお前のサポート役しているが、退職しても文句は言うなよ」
「俺よりも我がままで融通の利かない柚希のサポート役をさせるのは非常に心苦しいな」
「父さん、凄い物言いだな。俺に喧嘩でも売ってる?」
「嫉妬だ嫉妬。俺も眞彩さんのコトスキだから・・・」
「そうだったの?尚貴さん」
「冗談だ。社内の若手社員の間では眞彩さんの人気は高いんだぞ。柚希。でも、彼女は『桐生建設』の令嬢。
皆…彼女を『高嶺の花』だと言って遠目で見ているだけ。おかげで彼女には何一つ浮いた噂は無かったし、男の存在も感じなかった。しかし、俺の息子と付き合っていたとは。我が『ソーマ』の『高嶺の花』を射止めたんだ。幸せにしなきゃ沢山のオトコから恨まれるぞ」