いきなりプロポーズ!?
「今度移籍するチームは恋愛ゴシップ禁止のところだから、コイツには他人のふりを頼んでただけ。変な言いがかり、つけんなよ」
「嘘よ、そんなの(A)」
「そうよ、そんなまな板に豆粒の壁女がタツヤの恋人なわけないわ(B)」
「そんな不細工な女を買うぐらいなら、タダで私の体をあげる!(C)」
まな板に豆粒、壁、不細工……。そのセリフに怒りを通り越して私のHPはマイナス20になった。再生不可能ラインまであと10だ。ああ……もう立ち直れない……。
「コイツにはもうプロポーズもした。入籍するまで公表控えてるだけだから。なあ愛弓?」
「へ……? プロポーズ?」
「なんだ、忘れたのかよ」
達哉は私の肩を抱いたまま、私の顔を覗き込んだ。大きな瞳で真っ直ぐに私を見つめている。その鋭い視線に射抜かれたように私は動けなくなった。確かに部屋で聞いた。でも、あれは元カノの舞さんに言った言葉で、私に対するものじゃない。でもここで演技をしなければ、スイートを追い出されてしまう。
「愛弓」
「た、達哉(棒読み)」
達哉が深呼吸した。迫真の演技に私は勘違いしそうになる。これは達哉の本心じゃない。そう必死に自分に言い聞かせた。
「もう1回だけ言ってやるよ。“元カレなんか忘れさせてやる。俺と結婚しろ”」
「……あ、はい(棒読み)」
「なんだよ、その気の抜けた返事!」