いきなりプロポーズ!?
§10 恋もオーロラもブレイクアップ? ギブアップ?!
 バスに乗る。もちろん達哉と一緒に座る。曲がり角で体が傾くと否が応でも奴の体に触れてしまう。私の心臓はずっとバクバクしたままだ。ニセモノとは言え、あんな風にプロポーズされてしまったら、どうしたって自分のことにあてはめてしまうではないか。そしてそのあとの熱いキス。強引に入り込んできた達哉のそれを思い出してしまう。全身がヒリヒリする。かあっと顔が熱くなった。それと同時に切なくて胸が痛い。

 砂利道に変わってバスがガタガタと揺れる。隣に座る奴の腕に自分の肩が触れてその度にびくりとする。


「どうした? 大丈夫か?」
「あ……うん。ちょっと疲れたかも」
「本当は俺のキスで朦朧としてんだろ?」
「え、そんなこと!」


 そうです、とも言えず否定の言葉を出す。達哉は意地悪にクスクス笑うと私の頭をポンポンと叩き、私の頭をぐいと達哉の肩に寄せた。


「疲れてるなら寝てろ。ほら。肩、貸してやる」
「……うん」


 達哉の肩、というよりは達哉の胸に寄りかかった。だって達哉の腕は私の肩を抱いていたから。達哉の胸板は厚くて、寄りかかりづらい。でも無理やりに達哉に自分の頭を預けた。まるで達哉の鼓動を聞きとろうとするみたいに。


「愛弓」


 名を呼ばれて達哉を見上げた。達哉は私の顔をのぞきこむ。というか顔が近い。


「もう1回、してやろうか?」
「ば、バカ!」


 本当にキスされてしまったら、泣いてしまいそうで、私は下を向いた。達哉が私の肩をギュッと抱く。彼に包まれつように私はいる。本物の恋人みたいだ。もう気がおかしくなる……。


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