いきなりプロポーズ!?


「おお……お、オーロラ、オーロラが見えるぞ!」


 その言葉に室内にいたツアー客はざわついた。


「か、カーテンになってる!」


 一斉に皆が立ちあがる。そして支度を始めた。私はテーブルを挟んで達哉と目を合わせ、頷く。となりに置いていたジャケットを拾い、袖を通した。達哉は自分のファスナーを上げながらテーブルを回り、私の前に小走りで来た。ひざまずき、今度は私のファスナーを留めて上げる。達哉の赤い帽子、赤いポンポンが揺れる。


「ありがと」
「素直だな。行こう」
「うん」


 達哉は首に下ろしていたマスクを鼻まで上げてからグローブをはめた。私も同じようにマスクを上げた。3日間借りっぱなしだけど、達哉の匂いが残っている。

 外に出ると空には薄雲が張っていたけど、北の空から天頂にかけて楕円形に雲が切れていた。それを横切るように緑色の光が揺れている。昨日見た帯状よりも高く、天頂から掛けられたカーテンのようだ。そこにいた皆が声を出して喜んでいだ。オーロラ、オーロラだ!、って。私は空を見上げてただただ見つめていた。


「きれい……」
「ああ。こうなるとオーロラを見たって気分になれるよな」


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