いきなりプロポーズ!?
シャワーを浴びて部屋にもどると達哉は寝息を立てて寝ていた。掛け布団がめくれて浅黒い肌が露出している。
「もう。風邪引くってば」
私は達哉のベッドのそばに立ち、めくれた布団とカバーを掛けなおした。がさがさ、その拍子に達哉は寝返を打って仰向けになった。一度止まった寝息も再開した。気持ちよさそうにスースーと鼻から息をして、熟睡しているようだ。
「達哉。ありがと。こんな気持ちにさせてくれて」
この旅行に来る前は元カレにフラれて、自分が悲劇の主人公でいる錯覚を起こしていた。私は悪くない、突然私を捨てた松田さんが悪いんだ、って。同時に自分にも自信をなくして、恋という明るい響きとは無縁の世界に閉じこもっていた気がする。
でもここに来て私は少しだけ変わった。恋をした。もしかしたら“まやかしの恋”かもしれない、旅先の高揚感で錯覚を起こしているのかもしれない。ビーチの夏の恋とかゲレンデの冬の恋とか、そいういう類のもの。帰国して日常の生活にもどったら消えてしまう感情かもしれないけれど、こうしてときめかせてくれたことに感謝したい、って。