いきなりプロポーズ!?

「じゃあ、気持ちいい?」
「よくない」
「素直に言えよ」
「き、気持ちいい」


 そう答えるとくすりと笑い、顔を近づけてくる。私は目を閉じた。4度目のキス。いまはまわりに誰もいないから、演技のキスじゃない。軽く触れてすぐに離れた。


「しない」
「へ?」
「アレ、持ってねえし。それに遊びはダメだろ」


 耳をくすぐる達哉の指は私の頬に向かい、鼻のてっぺんを突く。女の子にする?、ってたずねておいてそれはナシだ。達哉は私の気持ちも知らずに指を動かす。手のひら全体で私の頬を包んだ。親指で私の唇に触れる。何度も何度も往復させた。達哉を感じようと唇の神経が敏感になる。達哉が唇をなぞるたびに私の体は硬直してピクリと震える。


「こうして人に触れてるとあったかいな」
「あ、うん」
「添い寝して」
「は?」
「なんにもしねえから、隣にいろよ」
「……うん」


 頬を離れた右手が私の顔の脇に移動し、手をついて達哉は自分の体を支えた。肘をついていた左腕を動かし、私の首裏にするりと通した。腕枕だ。筋肉質のそれは高くて固くて座りが悪い。直後、達哉はその腕をぐいと曲げ、私を横向きにさせた。再び目の前に達哉の顔。右手はまた私の顔にもどる。近い、顔も体も。ああ、もうだめだ……心臓が鼓動をしすぎて早死にしそうだ。


「寝ろよ」


 寝れません。


「荷物もまとめなくちゃいけないし、2時間も寝れないぜ」


 分かってます。


「ほら、目を閉じて。おやすみ」


 達哉の右手が私の瞼に向かう。軽く押さえて瞼を下げようとする。仕方ないので私は目を閉じた。達哉の指はそのまま頬や額をなぞった。くすぐったいけど気持ちいい……。

 達哉の大きくて暖かい手は私をしばらくの間なぞり続けた。頬、額、耳、たまに首まで。その心地よさに私はだんだん眠くなってきた。そしてふうっと眠りの世界に入って行った。







< 126 / 144 >

この作品をシェア

pagetop