いきなりプロポーズ!?
 フェアバンクスからのフライト時間は7時間。寝不足と疲れから私はかなりの時間、寝ていた。もちろんまわりの音やエコノミーシートの狭さに目を覚まして何度も起こされたけど、すぐに上の瞼と下の瞼はくっついた。人間、睡魔には勝てないものだ。達哉もとなりでゴーゴーと寝息を立てて寝ていたし。

 入国審査を終えて空港内に放り出される。


「達哉、ありがと」
「いや。こちらこそ。オーロラ見て世界観変わったか?」
「うん!」


 綺麗だったオーロラ、荘厳で神秘的で。そんな現象を達哉と見れたのは収穫。私にも恋はできるんだって教えてもらえたから。片思いだったけどそれでいい。もう会えないかもしれないけど、テレビや紙面で達哉の活躍は目にすることもあるだろう。それが私にとっても、一番のご褒美だから。


「じゃ、ちゃんと元カレに会ってこいよ」
「そだね」
「そしたら……」
「そしたら?」


 達哉は私を真っ直ぐに見詰めた。


「達哉?」
「……なんでもねえ。ちゃんとキスの仕方を教えてもらえ!」


 達哉はぷいと横を向くと右手を上げ、後ろ姿で私に手を振った。私もそれにこたえて手を振る。さよなら。達哉。またどこかでね、と祈りながら。






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