いきなりプロポーズ!?

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 あれから1ヶ月。日本は年が明けた。年末のどたばた旅行から帰宅したあとは実家に帰省した。両親や親戚に結婚はまだか仕事はどうだとせっつかれ、適当にあしらって2泊して、再びひとり暮らしのアパートにもどって来た。仕事始め、満員電車に揺られて会社に向かう。菜の花文具も相変わらずののんびり雰囲気でこれといって変わりはなかった。でもちょっとだけ私の行動は変わった。会社のロビーに置かれているスポーツ新聞に目を通すのが日課になった。夕刻、仕事を終えて人もまばらになったロビーの片隅でそれを広げる。見るのはサッカーのところだけ。チームの練習風景の隅に達哉が映っていることもあって、私はその姿を見てうれしくなった。達哉の元気な顔、輝いた表情。記事にもリハビリは良好で達哉の復帰が決まれば来シーズンは期待が持てる、とはやし立てられていた。

 そんなある日、私のスマホが鳴る。


「もしもし。KKBツアーズ秘書室の平と申します。真田愛弓様でいらっしゃいますか?」


 出たのは明るい女性の声。KKBツアーズからの電話とその台詞に懐かしさを覚えるが、その声は以前連絡をくれた女性の声とは雰囲気からして違っていた。


「はい。あの何か」
「先日のツアーでは大変ご迷惑をおかけしました。本当に何をどう申し……」


 どうやらオーロラツアーのお詫びの電話のようだ。秘書室直々ににとは驚いた。


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