いきなりプロポーズ!?
「お前さ、その英語力でよく海外に行こうって思ったよな」
「うるさいわね! 添乗員付きだから大丈夫だと思ったの」
「池の鯉みたいに口パクパクさせて、おもしろかったぜ」
赤帽男は肩を震わせて笑った。ホントに感じ悪い。
「いざというときには翻訳辞書も持ってきたし」
「なんで今出さねえんだよ」
「忘れてたの」
「なんか飲む? 俺ビール。愛弓は?」
「水。いまアルコール飲んだら爆睡しそうだから」
「そ。爆睡しても襲わねえのに」
赤帽男は手を挙げてボーイを呼んだ。そして堪能な英語をひけらかす。
「Some water for my wife and I will have a glass of beer,please.」
ぶはっ。英語がまるで分からない私にも聞き捨てならない単語が聞き取れた。
「ねえ! 今、ワイフって」
「しっ! 聞こえるだろ?」
赤帽男は人差し指を立てて唇にあてた。そして目線は入口にいる日本人の年配の男女を指した。見覚えがある。ということは。
「同じツアーに参加している夫婦だろ」
「だと思う」