いきなりプロポーズ!?
「はい!」
と、元気に肯定のお返事。
「ちょ……痛っ」
次の瞬間、手の甲にキツい痛みが走る。手元を見ると赤帽男は私の手の甲をつねっていた。しかも思い切り、ぎゅぎゅーっと。あまりの痛さに声も出ず、私は口をあわあわとさせながら右隣の顔を見上げた。そんな赤帽男はちらりと私を見やると再び鈴木夫妻に視線を戻した。
「正確には婚前旅行ですけど」
「あらまあ」
「コイツがオーロラ見たいってうるさいんで」
「婚前?……コイ……うる……痛っ」
ぎゅぎゅーっと再びつねられた。痛くて涙が出そう。なんでコイツと恋人で婚前旅行でオーロラ見たいの♪ダーリンおねがぁい♪(はぁと)的な流れにされてるのか訳わかんないし。
「鈴木さんは何を食べますか?」
「お二人は何を召し上がるの?」
「ポークリブです。あちらのお客さんが食べてるやつですけど」
「じゃあ同じもので。何を注文していいか分からなくて」
「なにか飲まれますか?」
「ビールと赤ワインを」
すると奴は手を挙げボーイを呼ぶ。そして流暢な英語でポークリブをさらにふたつ、ビールと赤ワインをグラスで、的なことを伝えた。鈴木夫妻は助かったと言い、ほっとしたようだった。
私は立ち上がり、赤帽男の手首をつかみ、立ちあがらせた。
「なんだよ、ったく」