いきなりプロポーズ!?
席に戻りながら考える。確かに恋人のふりをしていたほうが得策かもしれない。
だって変な噂が立っても大変だ。例えば……「ねえ聞いたぁ? あそこにいる赤帽男ととなりにいるすごく可愛い女の子!、あの二人カップルじゃないんですって!」「ええー? でも同じ部屋でしょ」「そうなのそうなの、奧さんそれなのよぉ。なんだかね、旅行会社の手違いで同じ部屋にされたんですって」「え、じゃあなに? あの二人はただの他人なの?」「そう。でもなんだか怪しくない? ほら、あの女の子ほう! 腰つきがやらしいっていうか匂いっていうか」「やっだあ、もしかして……やっちゃってる?」「やっちゃうなんて! 奥さんやらしいわよっ、もう」「奥さんこそ。ホントは妄想しちゃってるんでしょ? あんなことやこんなこと。フフフ」「体だけの関係?」「そう。この旅行の間だけの関係。どうせなら楽しもうぜ、ほら早く服脱げよ、とか?」「いやダメ、達哉さぁん、いやーん。なんて」「ほらもう感じてるくせに。ほら鳴いてみろよ。とっかあ?」「あの女の子、可愛いくせに節操ないわね!」
「……」
噂されるとしたらこんな感じ?? 見ず知らずの男と同室をOKしてオプションにも申し込まずに大半の時間を部屋で男と過ごし、あきるほどやってやりまくって、なんでもないふりで帰国した尻軽女……。このツアー客の中で今後実生活で関わる人がいるほど世間は狭くないが万が一と言うこともある。もしそんな噂が回ったらお嫁に行けない。快感の誘惑に負けて見ず知らずの男とやっちゃったエロ女だなんて。思わず頭を抱えた。
「ううっ……」
「お前、何か妄想してる?」
「えっ、な、何も」
「じゃあ、何ぼうっとしてんだよ。鈴木さんが話してるのに」
「あ、ごめんなさい」