いきなりプロポーズ!?
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 届いたポークリブはものすごいボリューミーだった。達哉はハーフサイズで頼んでくれたらしいがそれでもポークも付け合わせのポテトサラダも相当な量で、鈴木夫妻はあまりの量に3分の1くらいをを奴にシェアした。奴はそれらを綺麗に平らげて、私の残した皿も横取りして全部食べた。食後のコーヒーをすすっていると鈴木夫妻は私たちの分まで一緒に会計してくれた。二人でお礼をいい、ロビーでご夫妻とは別れた。

 部屋に戻るとベッドの上には薄いビニール袋で覆われたスカイブルーの物体が忽然と置かれていた。あらかじめ申し込んでおいたレンタル防寒着だ。もちろん日本からスキーウェアなどの自前のウェアを持ち込むことも可能だが、日本国内のゲレンデの気温をはるかに下回るこの異国では効き目も心配なのと、滞在型とはいえ、がさばるウェアを持ってくるのも面倒だった。なのでたいていのツアー客はレンタル防寒着を申し込んでいる。グローブとブーツもセットだ。


「一応サイズ確認しとけよ。キャンセル花嫁のサイズのままなら合わない可能性もあるし」


 隣のベッドにも青い物体はあった。達哉はそれを胸板の厚いゴリラそのもので両手でパンとビニールを引きちぎった。言葉も野蛮だが、こういう雰囲気もコイツは野性的だ。私も真似をしてビニールを引き裂こうとしたけど結構丈夫。んー、開かない。ビニールをつかんだ両手を何度も閉じては開き閉じては開き、を繰り返すけどなかなか破けない。

 すると奴がズンと寄って来た。しかも笑いながら。


「新手のラジオ体操?」
「なんでアラスカに来てラジオ体操第3を考案しなくちゃなんないの」
「何してんだよ、貸せよ」


 達哉は私から防寒着が入った袋を強引に奪い、目の前でパンと袋を破いた。北斗の拳に出てきてもおかしくはない。


「ほらよ」
「あ、うん」


 私はそれをベッドにおいた。肩ベルトのついたオーバーオールのズボンをジーンズの上から履き、ベルトの長さを調整する。それからジャケットをセーターの上から羽織った。サイズはちょうどいい。軽く屈伸運動してそれを確かめると保温が効くのかぽかぽかとすぐに体が暑くなる。その途端に眠気が襲ってくる。機内でも寝てはいたけどエコノミーの狭さに、隣の奴の体が大きくて圧迫感満載で熟睡できなかったから。


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