いきなりプロポーズ!?
奴はそういうと脱衣所を出ていった。直後、部屋のドアががちゃんと閉まる音が聞こえた。着替えを取りに一度寝室まで戻ったが、シーンと静まり返った部屋には誰もいなかった。奴は本当に部屋を出て行ったようだ。私はキャリーケースから着替えを取り出し、浴室に戻った。いや、待て。奴は本当に部屋から出たんだろうか。その辺の物陰に隠れて私が服を脱いだ瞬間にジャジャーンとか言って出てくるんじゃないか? 最初に部屋に入ったときにベッドの上で私に覆いかぶさった(シールを取るためだけど)、レストランのシロクマの剥製の脇で強引にキスしようとした(恋人に見せるための演技だったかもしれないけど)、これが3度目。ほら、3度目の正直って言うじゃないか。
不安になり、本当に奴が外に出たのかドアに向かう。レンズ窓からのぞいて通路を確認すると、私はドアをそっと開けた。隙間から顔を出す。
いない。やっぱり部屋のどこかに隠れてるんだ。
と思いきや、
「わっ!!」
「ぎゃああああ☆*□★※・▼§☆!!」
「なんだよ、こっちのほうが驚くだろうが」
「だって」
「確認しにくると思ってたぜ。ったく自意識過剰な女」
奴はドア横の壁にもたれて立っていたらしい。鼻を鳴らして私を見下ろす。
「いいから早く入れよ。俺もシャワー浴びるし」
「……うん」
「素直だな、気味悪っ!」
「うるさい。じゃあ」
私はドアを閉めて浴室に戻った。