いきなりプロポーズ!?
「で、彼氏となんで別れたの?」
「言わなかったっけ? オーロラを見ると世界観が変わる話」
「聞いたのそこだけ。それが別れたのとなんか関係あんの?」
「オーロラを見て世界観が変わって世界に旅立ったの。もっといろんな世界が見たいって」
「へえ」


 達哉は私を小馬鹿にしたように語尾を上げて相槌を打った。


「バカにしてるでしょ」
「はああ。だから昨夜、オーロラ見るのをためらったのか。つまりはまだ彼氏を待ってるわけね」
「待ってない。引きずってはいるけど」
「ふうん? でもそう顔に書いてあるぜ? “広い世界を見てきたら私を迎えに来てくれるのよね!”って。でも待てど暮らせど迎えに来ないからオーロラ見に来たんだろ? 本当にオーロラが素晴らしくて恋人を捨てたのか確認しにきたんだろ。たぶんきっと来ないと思うぜ? もし彼氏がお前のこと考えてたらとっくに連絡来てると思うし」
「だからそんなこと!」


 目の前の赤帽男アホ男ジンベエザメ男……達哉はパンケーキを平らげるパサついたバゲットを口に放り込み、スープで胃に流し込んだ。言われたらそんな気もする。潜在意識の中で松田さんを待っているんじゃないかって。1年経っても連絡すらないから私は焦りだした。で、オーロラを見ればあきらめもつくんじゃないかと。


「なに黙ってんだよ。本当にそうだから黙ってんだろ?」
「かもしれない」
「なら今、元カレに電話してみれば?」
「出るわけないじゃん。世界のどこにいるかも分からないのに」
「日本にいれば出るだろ」
「そんな……。松田さんの言葉を疑うようなこと」
「まだ信じてんだ、その松田って男のこと」



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