いきなりプロポーズ!?
ちょっとはイケメンだけど背も高いけど、口と性格は最悪なんだから。
「愛弓、昼飯、どうする?」
「え? もうお昼ごはんのこと考えてるの?」
「いやさ、昨日みたいにポークリブとかステーキサンドとか、メニューもこってりしてるしさ」
「でも他に食べるとこあるの? あってもランチならみんなそんなもんじゃない?」
「スーパーに買い物いかないか? 神山さんなら知ってるだろ、こっちに住んでるんだし」
確かにあっさりしたものや野菜が恋しい……。日本食とは言わないけど、シンプルにおにぎりとか食べたい。
「うん。行く。え、なに?」
達哉はテーブル越しに私を見つめていた。いつもの嫌味な表情はない。こういう顔をされると焦る。
「お前さ、そうやって素直に返事すると可愛いのな。いつもそうならいいのに」
「余計なお世話です! ふん」
甘い朝食に胸やけを覚えて階上の部屋に戻った。そのころには夜も明けて、北東の空から太陽が顔を出している。今日も晴天だ。夜のオーロラ観賞も期待できそうだ。
日本から着てきたベージュのダッフルコートを羽織る。今日はさほど冷え込んではいないらしい。それでも気温は摂氏換算でマイナス5度、日本のスキー場なら普通の寒さだ。買ったばかりのウールのキャスケットをかぶって手には分厚い白のミトンをはめた。肩かけカバンの紐をたすき掛けにする。達哉はモスグリーンのダウンジャケットを羽織って黒いグローブをはめた。もちろん頭にはポンポンつきの赤い毛糸の帽子。