いきなりプロポーズ!?
再びロビーに戻り、神山さんの姿を探した。スーパーの場所を聞くためだ。脇にファイルを抱えているブルーのスタジャンを着ていた。背中にはKKBツアーズと日本語のロゴが書かれてある。
「神山さん! おはようございます」
「こんに……おはようございます」
おはようと声をかけた私に合わせて言い直した神山さんもちょっと可愛い。年上の人に失礼だけど。
「俺たち、スーパーに行きたいんだけど」
「ならフレッドマイヤーがいいですよ。品数も豊富ですしここから歩いて10分もかからないですし」
「道順教えてくれる?」
「はい。これが地図のコピーです。えっとここを出て……」
ツアー客に聞かれるのか神山さんはファイルから地図のコピーを出して達哉に渡した。地図自体は英語のものだったけど吹き出しをつけてそのなかに日本語も書かれている。きっと神山さんが書き込んだんだろう。こういう気配りのできるひとのほうが女の子は幸せになれる気がする。
「新條さんなら大丈夫ですよね。迷っても英語も堪能でしょうし」
「じゃあ行ってきます」
「いってらっしゃいませ」
説明を聞き終えて外に出る。冷え込んでないとはいえ、空気は針のように頬を刺す。
「最初はどうなるかと思ったけど、神山さんも親切だよね」
「……ああ」
達哉はぼそりと言った。なんだか不機嫌そうだ。思ったより外気は寒かったんだろうか。路面は雪というよりは氷。サラサラしていた。車は皆スパイクをはいている。寒い所って雪がいっぱいと思っていたけど、どちらかというと氷の世界だ。降水量が少ないんだろう。晴天率の高いアラスカフェアバンクス。