いきなりプロポーズ!?
そこでようやく達哉は離れた。見上げると、達哉は眉間にしわを寄せて、困ったように私を見つめていた。
「……悪い。つい」
「ううん。心配掛けてごめん」
「無事ならいい。誘拐されたのかと思って焦ったから」
何となく気まずくてうつむく。私の肩を抱いていた達哉の手が離れた。視界にある達哉の靴とカートが動くのが見えてその方向についていく。レジに並んで会計する。袋に詰めて持つ。店内ではカードで移動していたから気にならなかった商品の重さもレジ袋で手に提げると重かった。手袋越しでも指に持ち手が食い込む。自動ドアが開いて氷点下の空気に身震いした。ホテルまで10分、がんばって歩かなくちゃ。
横を歩いていた達哉は突然立ち止まった。
「バカ」
「は?」
「歩きできたのに何買い込んでんの。計画性のない女。だからふられんだよ。ほら」
「袋ふたつ分で計画性がないなら3つも抱えてる達哉はどうなの」
「俺の本職は配送業だって忘れたのか?」
「ちょっと! 私の荷物!」
達哉は私が両手に提げていた片方の、しかも炭酸水の入った重たい方をひょいと奪い取った。
「また転んで地割れしても困るし」
「転んでないし、転んでも地割れなんか……」
奴は大股でさっさかささっかと歩き出した。大きな袋を4つも下げて。大きな背中。彼が吐いた息は白く立ち上る。
「あ、ありがと」
「どういたしまして」
彼が歩く後ろを私は黙ってついていった。