いきなりプロポーズ!?
「え? 他にもあったじゃない」
リカーコーナーには他にもワインはあった。赤とか白とかスパークリングワインとか。見た目もゴツいボルドーの赤もあったし、なで肩のボジョレーもあった。そこをあえてロゼを選んで不味いという達哉の意図が全く読めない。読む必要もないけれど気になる。
「ロゼがいいんだよ」
「ワケわかんないし」
どうやら奴はまた意識を別世界に飛ばしているらしい。バカ・アホ・ボケぇぇぇ!と怒号まがいの突っ込みがきそうなところなのに奴は黙ってグラスに口をつけた。
「……舞」
「マイ?」
「舞が好きだったんだよ、ロゼ」
「なに、元カノとか?」
「そ。ロゼが店にないといっつも拗ねて」
「ふうん」
こんな奴にも恋人はいたのか。まあ?、このルックスだしぃ?、そこそこ優しいところはあるしぃ?、と理由をつけてみる。でも私の心はずどーんと暗くなった。次の瞬間、痛くなった。自分の失恋を重ねてみているからだと解釈する。元カノを思い出してしんみりとしている達哉は妙に暗い。
「舞さんってどんな子だった? あ、話したくなければ話さなくてもいいから」
「身長158センチ体重45キロ」
「そうじゃなくて内面的なこと」
「お前の真似していったんだよ。真に受けるな」
「いいから。で?」
「会社の先輩で、大学時代から付き合ってた彼氏もいた」
「なんだ、片思いじゃん」
「それがさ、その男がだらしない奴でさ」