いきなりプロポーズ!?

「実家にもどってお見合いして結婚した」
「はあ? なにそれ!」
「付き合い始めてすぐに俺に渡英の話が出て」
「都営? 地下鉄??」
「バカ。イギリスだよ、イギリス。まあ、仕事の都合でチャンスをもらえて」
「で?」
「一緒にイギリスに行こうって言ったけど、勇気がなかったみたいでさ。ちょうどその頃、舞の実家でお見合いの話が出てそっちに乗っかったってワケ」


 グッドタイミングといえばそれまでかもしれないけど、どことなくスッキリしないオチだ。


「なんだか腑に落ちない話」
「どこが?」
「夜逃げの手伝いでイギリスにチャンスだなんて」
「そこかよ。ってか冗談だし、真に受けるなよ」


 すると数メートル向こうから女性3人のグループが駆け寄ってきた。レストランで私をクスクスと笑っていた人たちだ。私にというよりはピンポイントで達哉のほうに突進してきた。そして甲高い声で、写真を撮ってください、と言い、達哉の腕をつかんだ。一人は右腕に一人は左腕にしがみつき、もう一人は達哉の後ろに回り、背中を押した。まるで悪人の逮捕劇のようだ。まあ、夜逃げ手伝い人なら悪党の類だけど。女性たちはキャーキャーと黄色い声を出してはしゃぎ、奴を彼女たちの撮影ポイントまで連行していった。毛布でぐるぐる巻きにされたカメラは重そうに三脚の上に乗せられている。オーロラをバックに4人で横に並び、20秒くらいじっとして、それが終わると女性たちが場所を入れ替えて再びじっとし、また場所を入れ替えていた。まさに両手に花だ。女性たちは腕を組んで達哉の肩に頭をもたげている。撮影するのにフェイスマスクを外していた達哉は笑顔でまんざらではないらしい。なんなんだ、あいつ。女なら誰かれ構わず相手にするのか。



< 63 / 144 >

この作品をシェア

pagetop