いきなりプロポーズ!?
私はむかついてひとり、キャビンに向かった。煌々と光る白熱灯、がんがん焚かれているストーブ。中はがらんとして誰もいなかった。暑くなってジャケットを脱ぎ、ハーブティーをいれる。なんだかがっかりした。さっきオーロラを見て自然に手をつないできたのは私を受け入れてくれるからだという気がしたのに、あれはきっとカムフラージュだったに違いない。他のツアー客に恋人だと思わせるための演技だった、って。
壁際のベンチにドスンと腰掛けた。ふてくされて唇を尖らせ、ハーブティーをすする。カモミールとラベンダーをメインにブレンドされていて舌なじみもいい。あんなにデレデレした達哉、きっとこ今夜はお楽しみに違いない。3人の部屋にお邪魔して夜通し飲み会か、そのまま4人でプレイするとか。その舞さんって元カノにも失礼じゃないか。
ハーブティーを飲み終えて席を立つ。物音がしてドアを見るけど開く気配はない。達哉はまだお楽しみ中か、ふん。空いたマグをテーブルに置きに行こうとしたら、ドン、と何かに当たった
「Oops.」
なにやら日本語ではないのは聞き取れた。
「Oh, excuse me. I was looking the other way. Are you all right?」
目の前には壁、じゃなかった、グリーンのセーターの網目。達哉ではない。おそるおそる顔を上げると、青い瞳のブラウンヘアの外国人だった。背の高い彼は心配そうに私を見ていた。足元にはマグカップの破片。この人は心配してるんだと察知した。英語なんかしゃべれなくたって、コミュニケーションはなんとかなる。ふん。