いきなりプロポーズ!?
§7 あまーいはちみつは誰のため?
ピピピ、ピピピ……。
翌朝。アラームの音で目が覚めた。午前9時だ。といっても部屋は暗い。もちろん緯度の高いこの場所ではまだ日の出の時刻を迎えてはいないし、重厚なカーテンは開けられていない。たっぷりとはいえない睡眠時間だったけれど、よく眠れた。きっとそれは自分の気持ちを認めたから、というのと、達哉がむやみに襲ってこないという安心感からだ。目を擦って布団の中で伸びをする。
「ぬ……?」
「んんーっ」
何となく感じる視線。そして鼻息、というか吐息。真横を見る。
隣のベッドで達哉がこっちを見ていた。眠たそうに半分だけ目を開けて、短い髪をくちゃくちゃにして。そして上半身裸の男は寝たまま伸びをすると、こちらに体を向けて横向きになった。肘をついて頭を支える。
私の背筋はぞくりとした。達哉は眼を擦りながらこちらを見る。
「……愛弓、おはよ」
反則だ。そんな寝起きのセクシーボイスで“おはよ”だなんて。
「お……」
「なにそれ。ケンカしててもあいさつはしようぜ」
「……うん。おはよ」
私は喉の力を振り絞ってあいさつした。ケンカしてるからあいさつしなかったんじゃない。達哉の無防備な色気に私は声が出なかったのだ。
達哉はむっくりと起き上がり、ベッドを降りた。トランクス1枚で窓辺に向かう。そしてカーテンを開けた。曇天。暗くても分かる厚い雲だ。
「今日は曇りか。オーロラ拝めそうにないなあ」
達哉の半裸(全裸に近いけど)が否が応でも目に入る。奴は窓辺でも伸びをした。きっと素なんだろうけど、私には目の毒だ。ドキドキしてしまう、いかん、これでは本当の痴女ではないか!