いきなりプロポーズ!?
そういえば渡英とかなんとか言っていた。じゃあ配送業というのは嘘で、プロサッカー選手だったってこと? 言われれば思い当たる節はある。筋肉質な体、太い腕、太腿。がっちりとした骨格。ソックスをはいていたなら中途半端な焼け方をしているのも納得がいく。海外慣れしてるのも英語が堪能なのもうなずける。海を渡ってイギリスで生活していたならペラペラなのも当然だ。
「私もサッカーは分からないんだけど、ミッドフィルダーっていうポジションらしいわよ」
「ミッドフィルダー……?」
サッカーにうとい私はそのポジションがどんな役割なのかも知らない。まあ、サインを求められるくらいなんだから相当すごい腕の持ち主なんだろう。あ、サッカーだから脚か。我ながらうまいことを言ったもんだと感心していると、例の女性3人グループがエレベーターから降りてきた。彼女たちも手帳やノートを持っていて、達哉を見つけるとずかずかと彼の前に押し掛けていった。サインくださーい、という黄色い声に達哉の顔はほころんで、同時に鼻の下も1センチくらいのびた。ふん。達哉はマジックでさらさらと筆記体のようなものを書いている。
3人分のサインを終えると達哉の右に茶髪女子、左に黒髪ストレート女子、背中に金髪ショート女子が回り込んだ。茶髪がレストランの入口を指でさし、黒髪が上目遣いに達哉を見上げる。背後に回り込んだ金髪が達哉の背中を押した。どうやら4人で朝食を、という流れに持ち込んでるらしい。
「あら? 新條さんったら」
「いいんです。アイツ、同じ人間と飯食うのも飽きるだろって言ってましたから。きっと他の女の子と食べたいんですよ。私なんかより」
「そうかしら……」