いきなりプロポーズ!?
ちなみにカッコ内は私の心の声である。面と向かって言えるはずもない。
茶髪A黒髪B金髪Cは私をギロリと睨んでいっせいにフン!、と鼻を鳴らした。そして達哉の顔を見上げてにっこり笑い、レストランへ連行していく。例の青い瞳のボーイはなんの躊躇もなく4人を席に案内していった。
「まあ。ファンサービスかしらね。日本に戻ってくるみたいだから」
「そうなんですか?」
「契約期間が切れたって聞いたけど」
詳しいことはご本人の口から聞いたほうが正確じゃないかしらね、と夫人は言った。私は彼女に会釈し、レストランへと向かった。シロクマの剥製は相変わらずボケっと突っ立ていた。役立たずめ。
レストラン内をのぞくと4人は窓側の席にいた。あまり近くの席になりたくはないけど、それを伝えるだけの英語力は私にはない。達哉が他の女の子に猛烈アタックされてるのも見たくもないけど、ホテルのレストランはここだけだし、ひとりでスーパーまで買い物に行く気力もなかった。ボーイに向かって人差し指を立てて腕を伸ばし、ひとりです!、とアピールしていると、後ろから声を掛けられた。現地係員の神山さんだった。いつもの青いスタジャンだ。
「おはようございます、真田さん! 朝食これからですか?」
「はい」
「おひとりですか?」
「まあ、ええ」
「僕もまだなんです。ご一緒してもいいですか?」
他の男性と食事をすることにどことなく罪悪感があった。お詫びの食事に誘われたのとは訳が違う。でも私は達哉の恋人でもないし、思われてるわけでもない。ちらりと達哉を見る。私には全く気付かず、茶髪Aからフォークを受けとっていた。ストレートの少女風Bにコーヒーをすすめられている。あっちはあっちでお楽しみではないか。