いきなりプロポーズ!?
神山さんは一瞬ひるんだのか眉をハの字に下げたけど、私に視線を戻すとにっこりと笑った。ボーイに注文して彼も椅子に座った。
「昨夜はゆっくり休めましたか?」
「え、ええ」
昨夜……思い出してしまった。達哉の長いキス。ちょっと思い出しただけなのにすぐに唇が熱くなる。胸の中もきゅうっとなる。なのに達哉はどこ吹く風でABCと楽しそうに会話している。
「さあ真田さん、食事を取りに行きましょうか」
「はい」
席を立って壁側のバイキングコーナーにいく。白いプレートを持ってパンケーキやブレッド、昨日はなかったベーコンとゆで卵も乗せた。それと神山さんオススメのチーズも。席に戻ってフォークとナイフを持つ。隣の席からきゃははと甲高い笑い声が聞こえて私は一度それらをプレートの縁に立てかけた。藤カゴから新しいフォークとナイフを取り出して、向かいに腰かけた神山さんに差し出した。もちろん最上級のスマイルで。
「はい、神山さん」
「あ、真田さん、これはこれは恐縮です!」
そんな笑みを浮かべながらも横目でとなりを見る。大げさな反応に異変を感じ取ったのか、達哉はこっちを見た。ギロリ。神山さんがそれをつかもうとした瞬間、私はわざと手放した。カトラリーはテーブルの上でカタンと音を立てて落ちた。
「きゃ、ごめんなさい、神山さんの指に触ってしまって驚いちゃって。ごめんなさい」
「真田さんってウブなんですね、意外と」
意外とは余計だと思いつつも、もちろん私の目線は横だ。達哉の目が動く。ギロリ、ギロリ。