イイコでしょ?
今日は話が盛り上がっちゃって、何しに来たかわかんないくらいベンチに座り込んでいた。





全然カロリーを消費しないまま、二人でジムを出て、マンションの廊下を歩く。




「ねっ?美希ちゃんもしかして、結婚してる?それ結婚指輪?」





「えっ?あぁ、はい。してますよ。」





「へー人妻なんだ?ふーん、人妻ね?」





エレベーターに乗り込んで、32のボタンを押した。





「うっそ!一緒じゃん!」





「えっ?佐藤さんも32階?すごい!って言うかすごいとこ住んでるんですね?やっぱり芸能人ってすごいなぁ~。」





腕を組みながら納得するように呟くと、自分もじゃん(笑)と返された。





「私は…夫のおかげで住まわせて貰ってるだけで…」





「俺もそうだよ。事務所が用意したマンションだし。だから、美希ちゃんに会えたのも、事務所のおかげ。」





ニコッと笑いながら私の顔を覗き込んで来てびっくりする。




佐藤さんにこんな事されると、自分がドラマの主人公になっちゃったみたいに思えて、ちょっと得した気分になった事は、ヒミツだな。





扉が開き、笑い声を響かせながらエレベーターを降りると、数メートル先に翔さんが歩いてる後姿を見つけた。





思わず名前を呼び、手を振る。






「翔さーん!」





私の声に気付いた翔さんが振り返り、私達もそのまま翔さんの元へ歩いて行った。














「翔さん、こちら昨日話した佐藤拓人さんだよ!ジムでまた会ってね、部屋も同じ階なんだって!

あ、こちら私の…夫の成瀬翔さん。」





自分の夫だなんて紹介した事がなかったので、どう話していいものか、一瞬戸惑ってしまった。




でも直ぐに照れまくって顔が熱くなった。





ニコニコしてこんばんは!と挨拶する佐藤さんとは対照的に、翔さんは眉間に皺を寄せながら、睨むように見つめ、どうも、と軽く頭を下げた。






怒ってる?





引き合わせてから、マズイ事をした事に気付いて冷や汗が背中を流れた。










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