イイコでしょ?











「新井さんって彼女とか居ないんですか?」




テーブルで夕食の餃子を食べながら、テレビ前でソファーを背もたれにして餃子を摘まんでる新井さんに尋ねるけど、




フン、と鼻で笑われた。




彼女居るか聞いただけじゃん。





なんでそこで笑うかな。





聞いた私がバカだった、と肩を落として豆腐のお味噌汁を一口啜った。

















「じゃ、俺先に風呂行ってくるわ。」





バスタオル片手に脱衣所へ行こうとする新井さんを、廊下で通せんぼする。





無理に決まってます。と目を細めて睨むと、不満そうにチッと舌打ちを返された。





「そろそろ帰って下さいよ?電車無くなりますよ!」





「わーかってるよ。うるせぇなぁ。もうすぐ亮が迎えに来るからもう帰るよ。」





「亮?」





誰?とはさすがに聞けないけどちょっと気になった。





考えてる間に新井さんにバスタオルをヒョイと投げ渡され、帰る支度をし始めた。

















「んじゃ、また明日~。」





「はぁ…」





玄関まで見送ると、新井さんが突然思い出したように声を上げた。





「そう言えばさぁ、翔ちゃんと井上が別れた原因知ってる?」





「えっ?」





「フられたんだよ。翔ちゃんが。」





「フられた?」





「うん。その頃翔ちゃん親からのプレッシャーやら大きな仕事抱えてたりで、すげぇ大変だったの。」





私は何も言わず、ただ黙って聞いていた。





「井上も単なる社員だったから、自分が居る事で翔ちゃんの負担になるからって、自分から身を引いたんだよ。」





「……。」





「んで自分も翔ちゃんと並んで仕事が出来るようになれば、もう一度って頑張って秘書になったはいいものの。」





「…私が…」





「ピンポーン♪あったまイイ!翔ちゃんは何も知らないけどね。んじゃ帰る。バイバーイ。」






新井さんはヒラヒラと手を振りながら部屋を出て行ったけど、私は暫くそこから動けなかった。













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